六花荘について

エコロジーな六花荘とその実現手法

 

六花荘ではいま地方の一般的な賃貸住宅で起きている「エネルギーをたくさん使い」「非健康的で」「危険」な暮らしとは違うモデルを作り提案したいと考えています。

実は日本では、住宅の断熱性能に関する法規制はありません。どんなに断熱性能が低い家でも確認申請は通ります。
2020年に「省エネ基準」への適合が義務化される予定でしたが、住宅についてはまだ業界の認識やコストを吸収する技術などが省エネ基準の適合義務化に達していないことを主な理由として配慮を求める声が大きく見送りとなりました。

一応、義務ではないものの断熱等級といってUA値(外皮平均熱貫流率)、建物全体の断熱性を表すモノサシによる基準はあります。数値が小さいほど性能が良いことを示し、現在の国の基準では軽井沢地域で「UA値≦0.46」が最高基準の等級4です。

しかし私たちの経験から、札幌より寒い軽井沢で「UA値≦0.46」では明らかに断熱不足です。また朝起きても寒さを感じることなく、冬こたつ要らずで過ごすことができるレベルというのは、気密、日射取得が含まれていないUA値では判断ができません。

六花荘ではエコな賃貸生活を実現するために以下手法で設計、建築していきます。

 

1. 燃費計算して高断熱x日射取得

近年エコハウスの設計ではQPEXや建もの燃費ナビといったソフトで、建築物の省エネルギー計算を繰り返しながら設計を最適化する手法がとられるようになってきました。同じ予算でも断熱材の種類や厚みによるのはもちろん、窓の配置や種類でも住宅の省エネルギー性能は大きく変わります。

私たちはむしろ初期費用が限られた賃貸こそ燃費計算でシミュレーションすべきだと考えています。間取りや窓の大きさなどが及ぼす影響を確認しながら設計を進め、予算を効果的に性能向上に充てることが可能だからです。 燃費計算しないのは、知らない場所へ地図やナビ無しで行くようなものだなと思います。手探りで進むか、リアルタイムの情報をもとに航路を決定するかくらいの大きな違いがそこには存在します。

このようにして生まれた六花荘はもちろん付加断熱、開口部は全部トリプルガラスの樹脂サッシ。部屋タイプによって異なりますが、結果的におおむねHEAT20 G3クラスの高断熱仕様となっています。

LDKには大きな吹抜け。賃貸の吹抜けなんて冬超寒くて夏暑いイメージがありますが、断熱すれば吹抜けがあっても快適で健康的に過ごせます。我慢や節約ではなく、燃費計算し適切に断熱すれば、普段どおりに過ごしたり、したかった暮らしをするだけでCO2排出量を減らすことができます。

 

2. 全戸太陽光搭載

2020年10月26日、菅総理が「2050年カーボンニュート ラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。世界中で今「脱炭素」への挑戦が加速しています。EUは2050年にむけ野心的なCO2排出削減目標を宣言し、英国はカーボンニュートラルを義務化する動きもあります。また米国ではバイデン大統領が就任し即パリ協定復帰、2050年のカーボンニュートラルを目指すなど脱炭化に積極的な姿勢です。

そのような中で注目されているのが屋根上太陽光発電のポテンシャル。
正直言って以前は太陽光発電というと高額な買取価格と結果として発生した権利の金融商品化、里山などの無秩序な開発行為による土砂崩落や景観悪化などいいイメージを持っていませんでした。

しかし現在では売電単価の低下により、ようやくそうした一種のバブル的新規開発が終結しつつあります。また建物の屋根上に載せる太陽光は木を伐採することもありませんし、脱炭素に向け外せない要素であることは確かです。あくまで建物で使うエネルギーを断熱と日射取得で減らすのが先であって欲しいですが、数年後の未来では屋根の上に太陽光を搭載するのはあたりまえになりそうです。

これまで、一般的に賃貸は初期費用を減らす必要があるため、太陽光は載せることができませんでした。今回はPPAモデルで鈴与マタイ株式会社様にご協力いただき、入居者様に負担なく太陽光を搭載することができました。

 

3. 建築家による美しく長寿命な建物

鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して建設時のCO2換算排出量がとても少ない木造。長く使うことができれば解体して新しく建設せずに済む分、ライフサイクルでもCO2換算排出量は減らすことができます。
ではどうしたら長く使われる建物にできるのか。高耐久な素材の選定、断熱によって建物へのダメージが減少するなど要素はいくつかありますが、その最後の解は「美しさ」にあると私たちは考えます。

建物そのものの姿、そして維持管理に大きなコストを払わずとも経年が劣化でなく味わいとなる素材選定。シンプルだけどチープではない内装、ベーシックだけど無粋ではない家具。外壁は杉無垢材ウッドロングエコ塗装、内壁は紙クロス、床はクリ無垢フローリングオイル塗装など通常賃貸では使われない天然素材を用い、美しく長く使われる建物を目指しました。

世界有数の森林国である日本。現在、主伐期を迎える人工林が約7割と見込まれるなど、森林資源はかつてないほどに充実しています。一方で人工林資源の活用は森林の成長量と大きな乖離があり、また高齢化した木はCO2吸収量が低下します。
皆が木を使いたくなるような、美しい木造の賃貸住宅を実現していきます。