Web内覧会

ディテール:界壁

計画

六花荘のプランをはじめて見たときのこと。賃貸で初期費用の制約が厳しいから、当然基礎や外皮の面積を小さくした2階建てになるかと思っていたら、平屋に見える建物がそこにはあった。

驚くと同時に、平屋でありながら界壁部分を高くすることによって集合住宅然としないその佇まいと、空間の大きな部分を共用し熱損失を抑制している計画に、これまでには存在しない集合住宅で、六花荘プロジェクトらしいなと惹かれたのだった。

そんな界壁の構成について、すこし心配が生じたのは某氏のWebセミナー。高断熱集合住宅のプレゼンで、界壁はもう少し強化してもよかったとの話があった。
構成的には柱を浮かせ、合板は9mm、GW24K 50mm を充填し千鳥スタッドのように衝撃音が伝わらないよう工夫したうえでPB12.5mm片側2枚(計4枚)目違い張り。

そこまでしても断熱気密をしっかり施工して、開口部のグレードも上げると、外の音が入ってこない分、普通のアパートより気になるというのだ。

六花荘は界壁の間に音対策でグラスウールを105mm入れて、合板は9mm、PB 12.5mmを目違いで片側2枚(計4枚)という設計で進んでいる。明らかに心配だ。

すぐにセミナーの情報を設計・施工方と共有し、界壁の工事をして仕上げる前に音の確認をすることとなった。

確認

さて、先行する棟で界壁がいったん出来上がった。現地に行くと隣の住居でエアーツールを使う音がバシバシ聞こえる。

六花荘が想定している入居者 - 都市部から移り住む世帯 にとって音は軽視できない。
自然の中で子育てをしたいと思うきっかけがあって引っ越しを決断しているだろうことは容易に想像がつく。

都会で子育てしていると程度の差こそあれ子どもたちが子供らしく振舞うだけで肩身の狭い思いをした経験があるのではないだろうか。
集合住宅で暮らしていれば、家の中で子どもに走り回らないで、叫ばないでと注意したことがあるだろうし、周囲の居住者からの手紙がポストに入っていたなんてこともよく聞く話だ。

そこで上からさらに遮音シートを両側に貼り、石膏ボード12.5mmを貼り増しした。計6枚、コンセントボックスから片側だけ見てもさすがに分厚い!

さらにリビングとリビングが面する棟は、苦渋の決断。天井に吉野石膏のニュータイガートーンを採用した。見た目は学校の視聴覚室!みたいな素材で、色も和紙の柔らかな白と異なり工業的なホワイトなので本当に悩んだけれど、「今からでもできるだけやったほうがいい」という妻の意見に後押しされた。

今後について

対策工事完了後、不安な気持ちで音楽を再生してみる。
玄関ドアを固く締め、隣の部屋に移動する。高断熱特有の静けさが僕を包む。

ここまでやって正解だったことはすぐにわかった。何も聞こえない。

今思えば工事中は仮設電源引き込みのため、どの住居も窓が開いている部分があったので、そこから音が回ってきていたのかもしれない。

その後入居者様にヒアリングしたところ、普段生活音は全く聞こえないそうだ。ただ子どもが叫び、もう片方の住居が静かだと、あー泣いてるなと聞こえるとのこと。
いまの入居者様は小さな子どものいるご家庭が多いため、お互いさまということで暮らしているので、そこも大切なポイントかもしれない。

今回工事してみて、吸音・遮音素材を使っても隙間があれば音は伝わるので、界壁もきっちり気密を取るのがいいのではという仮説を立てている。

もしまた集合住宅を作るときのために、さらに良くなるだろう項目を備忘録として残しておく。
 ・柱を浮かせ千鳥間柱にする
 ・グラスウールでなくロックウールを充填する
 ・一面気密シート処理する
 ・界壁の基礎と土台の間には基礎気密パッキンを使う
 ・さらに基礎と土台の取り合いにはユラソールで気密処理する

上記対策に加え、可能であれば子どもが走り回るリビングが両側面する間取りとせず、片方は水回りとかにできればさらにいい。できるだけ、コンセントやスイッチなどが付かない壁にすれば、天井は普通の材料でも気にならなくなるのではと期待している。

© UEDA Hiroshi