賃貸訪問記

訪問記3 共同住宅初のパッシブハウス(認定申請予定)

訪問記その3は岐阜県恵那市。賃貸ではありませんが、知人が設計した共同住宅新築の工事現場見学です。
なんと、共同住宅日本初のパッシブハウス認定申請予定、木造大型パネルによる施工といった注目のプロジェクト!

見学日は上棟初日

上棟初日に機会が設けられた理由は、大型パネルのスピード施工をぜひ現地で見てほしいという点にあります。
ここでは、ウッドステーション株式会社の大型パネル受託製造サービス「みんなの工業化」を使い実現していました。

パネルは4トンロング車1台につき6~8枚載って運ばれてきます。

現場には4トンロング車が入れる必要がある


 

話をしている間に次々とクレーンで吊り上げられたパネルが出来上がっていきます。

パネルの掴み金具部分は断熱材を後から追加する


 

壁には断熱材はもちろん、透湿防水シート、通気胴縁、そして窓まで組み込まれており、設置するだけで完成します。

半日で1棟2階の床までほぼできていた


 

木造2階建て、2棟からなる延床約700㎡ものプロジェクトですが、パネルは近隣県の工場で、もちろん他の家の生産をしながら年末年始含んで2か月でできたとのこと。工場は大型パネル専門ではなく、ハウスメーカーの家を作っている工場になります。

そして大型パネルというと、選べない木材、決まった仕様、遠隔地から職人さんが来て棟上げするみたいな囲い込みを想像しますが、一切そういった事はないそうです。

実際ここでは軸組に東濃桧(ぎふ認証材)を支給、断熱材はネオマフォーム、そして佐藤の窓で組み立てられた大型パネルになっていました。在来工法と同じように設計して、それがパネルになって届けられるので非常に自由度が高いです。結果共同住宅でここまでの仕様(後述)を実現しています。

佐藤の窓(九州杉Ver.)


 

これからの建築を考える

これまでの歴史から今後の建築を想像すると、職人さんも土日休みの完全週休2日制になっていくのは想像に難くありません。そうしなければ担い手がいなくなる、でも実現するには今より圧倒的に生産性を上げていく必要があります。

また私たちは政策に関係なく六花荘を高性能で建設していますが、断熱等等級6,7の新設が決まれば、一般の案件も性能のいい窓を使い、付加断熱していくことになると思います。非常に重く、そしてこれまでと同じ施工では手間が増加します。

その時に「みんなの工業化」は物件ごとに異なる個別の設計・仕様にもとづいて製造を受託、大手ハウスメーカー、中堅ビルダー、地域の住宅会社や工務店、建築家など利用者を限定することなくオープンにサービスを提供しているのがいいですね。

このような方式がもたらす生産性向上、就労環境と安全性の向上を想像すると、未来はこの方向にあると感じました。


 

この建物は企業がクライアント、工場で働く従業員のための寮だそうです。家賃のほか光熱費も会社が負担しているところ、同じ設計者で以前に新築3階建てのアパートを新設し、高断熱にすると光熱費負担が減ると言う成功体験を得てこのプロジェクトにつながったということでした。

そういえば一昨年見に行ったオガールネストも企業の社宅から始まったプロジェクトでした。

賃貸訪問記その2 オガールネスト編

 

今回の物件も超高性能で、屋根ガルバ、外壁杉板ウッドロングエコと、こうしたアパートを増やすためにはどうすればいいのか、建築家や建設会社が当事者として日本各地で形にしてみる、そこからまちづくりが始まっていくなどと考えながら運転していたら、帰りの3時間はあっという間でした。

 

建物仕様

(仮称)岩村共同住宅
設計 鎌倉寿建築設計室
施工 金子建築工業株式会社

木造2階建て
建築面積 430.66㎡
延床面積 690.09㎡
天井断熱 ネオマフォーム100mm+100mm
壁付加断熱 ネオマフォーム100mm
壁充填断熱 ネオマフォーム90mm
床断熱 ネオマフォーム100mm(大引間)+60mm(根太間)
サッシ 佐藤の窓
玄関ドア イノベストD70
換気設備 LWZ-130J x11台
給湯設備 HE-J46KZMS x9台(タンク室内置き)
太陽光 長州産業10.39kW